はじめての家づくり
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建物の構造②<木造軸組工法>
日本の伝統的な工法で、在来工法とも呼ばれます。柱や梁といった軸で骨組みを組んで作るやり方で、多くの工務店はこの工法で家を建てています。とはいうものの、どの工務店も全く同じ工法で建てているわけではなく、建築基準法などで定められた施工法を守りながら、独自の工夫とアイデアでオリジナリティのある工法を開発しています。ここでは、ごく一般的な木造軸組工法の構造について、その部位ごとの役割などをわかりやすく紹介していきます。
<部材の名称と役割>
●柱
柱は1・2階を1本で通す通し柱と、1・2階で寸断されている管柱(くだばしら)があります。通し柱は2階平面の4隅などの主要部分に用いられます。断面寸法は管柱で105ミリ角、通し柱で120ミリ角が標準です。屋根荷重・床荷重を土台に伝達する垂直材であり、大きな圧縮力が作用するので座屈が生じないようにする必要があります。
●間柱(まばしら)
柱と柱の間に約45センチ間隔で入れて、壁下地材の取り付けに使うための部材。構造柱ではないため、建物の強度には影響しません。
●胴差(どうさし)
建物の外周部で、1階と2階の管柱によって挟まれる状態で架けられる横架材。端部は通し柱に接合されます。幅は柱と同じ。2階部分を支える構造材であり、強度を増すためにせい(横架材の高さ寸法)を大きくする場合があります。
●梁
柱から柱に架けられる横架材。材料はマツなど粘り強い材料で、太い断面のものが用いられます。2階の床を支える「2階梁」と屋根を支える「小屋梁」があります。梁が走っている方向を梁間(はりま)といい、長方形平面の短辺の方向を指します。
●筋かい
柱と横架材で構成される四角形の対角線上に入れた斜材で、1方向に設けられるものと、たすき掛けに設けられるものがあります。軸組工法の柱と梁は基本的にピン接合であるため、地震・台風などによる水平力を受けると軸組は抵抗できずに変形してしまい、これを防ぐために設けられるのが筋かいです。断面が3センチ×9センチ以上のものは圧縮力に耐えられる圧縮筋かいとして、これ以下のものは引っ張り力に対抗する引っ張り筋かいとして用いられます。筋かいのかわりに構造用合板などの強度のあるボードを軸組に張り、剛性のある壁をつくることもできます。筋かいを入れた壁、あるいはボードを張った壁を耐力壁といいます。
●火打・方づえ
横架材同士の角部に斜めに渡される補強材で、水平方向の変形を防ぐものを火打と呼び、土台を強化するものを火打土台、梁を強化するものを火打梁といいます。横架材と垂直材の接する角部に斜めに渡される補強材を方づえといいます。
【床組】
床を支える構造である床組には、次のような種類があります。
●束立て床(つかだてゆか)
1階床に用いる方法で、束石(基礎)〜床束〜大引(土台や床束の上に渡して根太を支える横木)〜根太(床板を受けるために大引などに掛け渡す部材)〜床板の順に乗せ、床束は根がらみ貫で補強します。
●転ばし床
コンクリートなどの床上に、別の木造の床を作る場合に用います。コンクリートスラブに飼いモルタルを敷き、その上に大引(用いない場合もある)〜根太〜床板を組みます。RC造の集合住宅で多く用いられる床組です。
●梁床
2階に多い床。梁を1方向に掛け渡して、その上に根太を設ける床組。
●組床
2階の広い空間で、梁を2方向に組んで(大梁+小梁)その上に根太を設ける床組。
【小屋組】
小屋組は勾配屋根を支える構造体のことをいい、束と小屋梁からなる和小屋組と、トラスに組んだ洋小屋組があります。
●和小屋
小屋梁の上に小屋束を立てて屋根荷重を支えます。スパン(梁を支える柱と柱の距離)の大きい空間をつくるためには太い梁を使わなければなりませんが、屋根の形や間取りの自由度は洋小屋よりも高くなります。和小屋は、小屋梁〜小屋束〜母屋(もや)〜垂木(たるき)という構成になっています。母屋のうち頂部にあるものを棟木(むなぎ)といいます。小屋梁を軒にどうおさめるかで、折置組(おりおきぐみ:柱の頂点に梁をかけて、その上に軒桁を置く)と、京呂組(きょうろぐみ:軒桁の上に梁をのせて、軒桁が表に露出する)をいう区別があります。
●洋小屋
洋小屋は陸梁(ろくばり:和小屋の小屋梁に相当)、合掌(屋根の大三角形を構成する斜め材)、束、方づえなどの部材でトラス(三角形を単位とした構造)を形成したものです。
【建築金物の種類】
木造軸組工法では、構造部材の接合力を高めるために、建築金物(接合金物、緊結金物)が用いられます。釘、ボルトといった基本的なものの他に、以下のような種類があります。
●羽子板ボルト
片方の部材を貫いてボルトで締めるので結合力が強く、使用度の高い金物。主に、柱と主要な横架材(軒桁、梁、胴差)の結合に用います。
●アンカーボルト
基礎と土台の結合に不可欠な金物。
●短冊金物
1階と2階の管柱どうしや、通し柱で寸断される胴差どうしなどを、途中の部材をまたいで連結する。
●ひねり金物
垂木と軒桁など、特別な角度で接している部材を連結する。
●箱金物
柱と土台、柱と梁など、片方の部材を巻き込んで留める。
●角金物
L字型、T字型の金物。仕口部分を横から釘打ちして留める。
●火打金物
火打の役割を果たす金物。
●かすがい
大きいステープル状の金物。筋かいの固定などに用いるが、最近は筋かいプレートを取り付けることが多い。
●ジベル
木材の接合面に埋め込む金物で、接合部のずれを防ぐ。
●ホールダウン金物
柱の土台からの引き抜けを防ぐための金物で、柱と基礎を緊結する。
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